日本語/英語/韓国語の違い~「お菓子」と「聞く」で考える~
多言語学習の醍醐味の1つに、言語同士を比べて楽しむ、というものがあります。外国語の単語の中には、日本語と1対1で対応しているものとそうでないものがあることに気づかされます。
当記事では英語と韓国語と日本語の違いを「お菓子」と「聞く」という単語を使ってご紹介していきます。
少しでも語学学習に興味を持ってもらえると嬉しいです!
*本記事は約8分で読める記事です。下記緑枠に目次を用意していますので読みたい箇所へお進みください。
目次(この記事の内容)
1. 日本語/英語/韓国語の違い~お菓子~
1-1. 日本語の「お菓子」
日本語にはお菓子という言葉があります。普段何気なく使っている単語ではありますが、実はこれ、かなり便利な表現です。
母国語が日本語であれば意識はしませんが、「お菓子」というとポテトチップスやじゃがりこ、クッキー、飴、煎餅、グミ、チョコレートを全て意味することができます。その他、文脈によってはマドレーヌやカステラ、ケーキ、アイスクリームを指すこともできるわけです。
ほぼ同じ意味に、おやつ、という単語もあったりします。
ではこれを外国語ではどう言うのだろう?と思ったことはありませんか?
日本では、3時のおやつ、というくらいお菓子の文化が根付いていますが、他国の言語ではどうなっているのでしょうか?
1-2. 英語の「お菓子」
英語で「お菓子を食べたい」というのはなかなか至難の技です。というのも「お菓子」に1対1で対応した単語が無いからです。
「お菓子」を言おうとするなら下記になると思います。
confectionery
refreshment
ただ、この2語は共にややかしこまった印象があり、日本で言う「お菓子」とはイメージが少々違います。例文の「お菓子を食べたい」という言い方は、日本語では大人が使っても子供が使っても違和感がありません。
でも英語のconfectioneryやrefreshmentは子供は普通言わないです。そういった意味で日本語と英語は1対1で対応していないわけです。
従って、英語で「お菓子を食べたい」とは言えず、
I want candy(candies).(I want to eat candy./I wanna eat candy.)
I want chocolate(s). ← アメリカではcandyにchocolateが含まれる場合もあるようです。
I want snacks.
など、「お菓子」の部分を飴なりチョコレートなりスナックなり、具体化しないといけなくなります。
英語は不便だな、という感じもしますが利点もあります。
少しお菓子を食べるときのことを思い出してみてください。「お菓子を食べたい」と思っても、ポテトチップスを食べたい気分とケーキを食べたい気分が共存していることはほとんどありません。
「お菓子を食べたい」と思ってお菓子棚を覗いたときにポテトチップスしか無く、「いや、こういうのじゃなくてスイーツ系がいいんだよな」と思った経験はないでしょうか?
又、誰かのお見舞いなどに行くときに、お見舞い品のおつかいを頼まれ「お菓子がいいんじゃない?」と言われることがあります。
これって意外に日本語の不便なところで、お使いを頼んだ側はゼリーなどをイメージしていたものの、頼まれた側はどら焼きなどの和菓子をイメージしてしまう、ということがあります。結果的に頼んだ側の要望にならなくて怒られてしまうことがあります。
その点、英語であれば「お菓子」の単語が無いので、スイーツ買ってきて、ゼリー買ってきて、など具体的な品を指定されやすいので便利だったりします。(この場合、confectioneryと言われることもあるとは思いますが)
1-3. 韓国語の「お菓子」
では韓国語ではどうでしょうか?
韓国語には「お菓子」に当たる単語が存在します。
「과자」です。
クヮジャと読みます。ハングルの読み方については下記をお読みいただけるとわかります。
韓国語(ハングル)が読めるようになります!
「과자(クヮジャ)」は日本語の「菓子」にあたるものです。意味の範囲は日本語とほぼ同じで、スナック系にもスイーツ系にも使えるようです。
しかし細かいですが、日本語は「お」がついており、微妙ですが少し丁寧でやわらかいイメージがあります。
「お」がつかない場合は「菓子類」などで使うことができ、フォーマルで客観性があるイメージを演出できます。「お菓子類」と「菓子類」では印象が違いますよね?
対して韓国語では「お菓子」も「菓子」も「과자」であり、上記のような微妙なニュアンスの違いはありません。
言語というものは同じ人間が産み出したものにも関わらず、細かく見るとこのように違うのは不思議だなぁと思います。
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2. 日本語/英語/韓国語の違い~聞く~
2-1. 日本語の「聞く」
同様に「聞く」という表現を見てみます。
日本語の「聞く」も少々厄介です。例えば「お母さんの言うことを聞く」という文を考えてみます。
この文には下記の二つの意味があります。
○(お母さんが話しているから)お母さんのしゃべりに耳を傾ける
○お母さんが言ったことをする
前者は単純に耳で聞くだけの行為です。
後者はよく子供が「お母さんの言うことを聞きなさい!」と言われる場面ですね。話を耳で聞くだけではなく、お母さんの指示に従って行動する、という意味まで含まれます。
「聞く」であっても次の例はどうでしょうか。
「あの人に聞いたら?」
この場合、単純にあの人の言っていることに耳を傾ける、という意味は消え、「あの人に尋ねてみたら?」の意味になります。
でもなぜか、「あの人に尋ねてみたら?」と日本語ではあまりいいませんね。
不思議ですよね。「あの人に尋ねてみたら?」の方が意味がはっきりして良いような気がするのですが。
このように、「聞く」という単語は日本語では「(話に)耳を傾ける」、「指示に従う」、「尋ねる」の三つの意味があります。
2-2. 英語の「聞く」
それでは英語はどうでしょうか。まず思い浮かべる単語はhear、listenではないでしょうか。
hearは「聞く」より「聞こえる」に近く、listenの方が適切な場合が多いです。
しかしながら、listenで表現できるものは、先ほどの日本語の3つの意味の中で「耳を傾ける」だけです。なので「お母さんの言うことを聞く」を英訳すると、3種類の英文ができあがります。
○(お母さんが話しているから)お母さんのしゃべりに耳を傾ける
→ listen to your mom
○お母さんが言ったことをする
→ do what your mom told you to do
もしくは
→ be obedient to your mom
などでしょうか。
直訳するとそれぞれ、
「お母さんがあなたにやるよう言ったことをする」、「お母さんに従う」です。
◯お母さんに尋ねたら?
→ How about asking(ask) your mom?
あたりでしょうか。文法的にはaboutのあとはingにしなければなりませんが、ネイティブがingをつけずに話しているのを聞いたことがあります。
フレンドリーな相手であればingがなくてもいいのかもしれません。
まとめますと、日本語の「聞く」にあたる英語は
- listen → 耳を傾ける
- do what ~~~ → 指示通りのことをする、従う
- ask → 尋ねる
となり、三つも候補があることになります。
通訳者はこのあたりを瞬時に判断し、適切に訳しているのですね。すごいですよね。
2-3. 韓国語の「聞く」
韓国語の「聞く」について考えてみます。「お母さんの言うことを聞く」の例文を見てみましょう。
これを韓国語にすると
어머니의 말을 듣다.
オモニェ マルル トゥッタ
です。これには「聞く」の基本である「耳を傾ける」の意味があります。
それでは「お母さんの言ったことをする」の意味は듣다にあるのでしょうか。
改めて辞書をひいてみました。
小学館/韓国・金星出版社
朝鮮語辞典
によると4番目の意味で載っていました。
(目上の)言いつけに従う という意味です。
ゆえに、
어머니의 말을 듣다.
で「お母さんの言うことに耳を傾ける」の意味と「お母さんが言ったことをする」の意味、双方いけるということです。
日本語と同じで文脈によって意味するところが変わるのですね。
それでは「あの人に聞いたら?」はどうなるでしょうか。듣다には、「尋ねる」の意味はありません。
この場合は
그 사람에 물어 보는 게 어때?
ク サラメ ムロボヌン ゲ オッテ?
です。
上記のように、「尋ねる」の場合の「聞く」は묻다を使います。
例文では動詞の活用により묻다 → 물어になっています。ㄷ変則活用で、下記でご説明していますのでご興味のある方は読んでみてください!
ㄷ変則活用がわかります!
この活用は韓国語習得におけるクセモノです。すべての活用の仕方や活用語尾を下記でまとめています。
韓国語の活用がわかるようになります!
話を戻しますと、韓国語では「聞く」にあたる動詞は二つで、「듣다(トゥッタ)」と「묻다(ムッタ)」になります。
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3. まとめ
いかがでしたでしょうか?
日本語、英語、韓国語の違いを「お菓子」と「聞く」を取り上げてご紹介しました。
日本語の「お菓子」は意味が非常に広いことがおわかりいただけたことと思います。意味が広いことによる利点も多いですが、反面、具体的にどのようなお菓子を指しているかはあいまいで、不便である側面もあります。
この点は韓国語の「과자(クヮジャ)」も共通ですが、韓国語では「お菓子」も「菓子」も과자なので日本語の丁寧表現である『お』菓子のニュアンスが出せません。
英語はそもそも「お菓子」にあたるドンピシャリの表現がなく、スナック菓子やチョコレート、といった具体的なものを指定する感じになっています。
また、日本語の「聞く」は「①耳を傾ける」、「②(誰かが)言ったことをする、従う」、「③尋ねる」の意味があり、すべての意味が「聞く」という単語ひとつで事足ります。
しかしながら英語でそれを表現しようとすると、ひとつの単語ではまかないきれず、①listen、②do what ~~~(be obedient to)、③askとなってしまいます。
韓国語では①と②は듣다で足りますが、③は묻다となり、やはりひとつの単語ではカバーしきれません。
このように、日本語と英語と韓国語では単語の持つ意味の幅が違うため、訳すのに非常に苦労する場面もあります。
すべての単語の意味が1対1で対応していれば楽なのですが、そうはいかないところが言語学習の奥深いところでもあります。
少しでも言語学習に興味を持っていただけると嬉しいです。その他多言語学習を通してわかることや楽しさなんかを下記の記事でご紹介しています。ぜひご一読ください!
多言語学習のメリットやおもしろみがわかる記事です!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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